MSは、英語名(Multiple Sclerosis)の頭文字をとった略称です。
私たちの体は、免疫によってウイルスや細菌などの外敵から守られています。MSは、免疫が何らかのきっかけで自己のミエリンを外敵と見なし、攻撃することによって起こるのだと考えられています。そのきっかけが何かははっきりしておらず、いくつかの要因が関与しているとされています。
※図はTrapp BD et al. Neuroscientist 5(1):48-57, 1999 より改変
詳しい診察と複数の検査をおこない、総合的に判断して診断されます。検査には、MRI検査、誘発電位検査、髄液検査などがあります。
中枢神経系脱髄疾患の診断アルゴリズム
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン 2023より
急性期治療 = 炎症を鎮めるために副腎皮質ステロイド薬を使った治療が中心
症状が重い場合:血漿交換療法や免疫吸着療法を追加
痛みやしびれ、排尿障害などの症状は、薬である程度軽減することもできます。
再発予防治療 = 最近では,オファツマブ,ナタリズマブなどが使われることが多い
再発寛解型MSの治療アルゴリズム
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン 2023より
効果不十分→第二,第三選択薬(強い治療効果)に切り替え
オファツマブやナタリズマブなど有効性の高いDMDで開始
◎escalation therapy=疾患抑制効果を発揮する機会を逃す可能性
→有効性の高いDMD から開始
安全性を重視したescalation therapy
→病初期から効果の高い薬剤を選択(induction therapy)
MSの経過は様々で、誰にも予測できません。何年も安定して普通の生活を送っている人もいれば、年に1回程度悪くなる人、いつの間にか徐々に歩きづらくなっていくような人などがいます。海外の統計では、早期治療によって良い状態をより長く維持できることが示されています。 再発はストレス、風邪、過労、出産などが引き金になることが多いようです。病気が安定している時は、過労がたまらない程度の運動をして、休息を取ることが大切です。
MSの経過は様々で、誰にも予測できません。何年も安定して普通の生活を送っている人もいれば、年に1回程度悪くなる人、いつの間にか徐々に歩きづらくなっていくような人などがいます。海外の統計では、早期治療によって良い状態をより長く維持できることが示されています。 再発はストレス、風邪、過労、出産などが引き金になることが多いようです。病気が安定している時は、過労がたまらない程度の運動をして、休息を取ることが大切です。
Neuromyelitis Optica(視神経脊髄炎)を略してNMOといいます。 これまで日本では、病巣が視神経と脊髄に限るMSを「視神経脊髄型MS」としてきましたが、このタイプの大部分がNMOだということがわかりました。 NMOは、重度の視力障害と、長い病巣を持つ脊髄炎、そして血中に「抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)」があることが特徴です。MSとは治療法が異なります。
NMOSDに関する診療環境の最近変化
視神経炎と脊髄炎を中核とする中枢神経の自己免疫性疾患
→疾患概念の変化:AQP4 抗体が病態に関与する疾患
【2015年NMOSD国際診断基準】
空間的多発やMRI所見などの条件+他疾患の除外,複数の疾患群で,一部は抗MOG抗体陽性
高度視力低下 | 両側性が多い 急性発症(2~3日以内) 重症 (視力0.1↓~失明) |
視野異常 | ・中心暗点 ・両耳側半盲→視交叉病変 ・非調和性同名性半盲→視索病変 ・水平性半盲 |
色覚異常 | 色が判りにくい(特に赤と緑) |
眼の痛み | 眼を動かすと眼窩深部の自発痛 |
羞明 | まぶしい |
・横断性脊髄炎が多い |
・重症の運動麻痺, 膀胱直腸障害 感覚障害が多い |
・回復期 →有痛性強直性攣縮 疼痛など 難治性感覚障害が多い |
・MRI
急性期 | 脊髄中央部に3椎体以上連続する 髄内T2 高信号病変 |
慢性期 | 脊髄萎縮 |
最後野症候群 | ・難治性吃逆:時に数日~数週間持続 ・嘔吐(悪心) |
間脳・視床下部病変 | ・過眠(二次性ナルコレプシー) ・抗利尿ホルモン分泌異常症:尿崩症 ・高プロラクチン血症 ・嚥下障害 ・呼吸不全 ・複視 ・構音障害 |
大脳病変 | ・意識障害・痙攣 ・片麻痺 ・同名半盲 |
MRI
視神経50%以上のT2高信号病変
造影病変.しばしば視交叉病変
広範な浮腫性の大脳白質病変,長径が3㎝を超える腫瘤様病変など
NMOSDの治療=「急性期治療」「再発予防治療」「対症療法」の3つ
NMOSDの治療=「急性期治療」「再発予防治療」「対症療法」の3つ
MSの疾患修飾薬=NMOSDに無効 or 再発の増加
AQP4抗体陽性NMOSDの再発予防治療
無治療では1年以内の再発が多い
障害度は再発ごとに段階的に悪化
一度の発作で失明や車いす生活になることもある→再発予防が重要
当院では積極的に再発予防治療薬を用いています